がんゲノム医療とは
がんは遺伝子の変異によって生じる病気であり、その遺伝子の変化は患者さんごとに異なります。
がんゲノム医療とは、がんの組織などを用いて多数の遺伝子を網羅的に解析し遺伝子変異を明らかにすることで、患者さんそれぞれの体質や病状に合わせた治療などを行う医療です。
長岡赤十字病院では、保険診療に基づく2種類のがん遺伝子パネル検査( OncoGuide™ NCCオンコパネル, FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル)を行っています。
がん遺伝子パネル検査
がん遺伝子パネル検査でわかること
がん遺伝子パネル検査は、がん細胞の遺伝子変異を検出し、患者さんに合う薬があるかどうかを調べる検査です。
遺伝子変異が見つかり、その遺伝子変異に対して効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などでその薬の使用を検討します。
◆OncoGuide™ NCCオンコパネル(保険適応)
NCCオンコパネルはがんに関連した124遺伝子を調べます。
◆FoundationOne®CDx がんゲノムプロファイル(保険適応)
FoundationOne(ファンデーション・ワン)はがんに関連した324遺伝子を調べます。
がん遺伝子パネル検査の留意点
現在のがん遺伝子パネル検査では、実際に自分に合った薬の使用に結びつく患者さんの割合は10%程度と報告されています。
検査を実施しても治療につながる有効な情報が得られない可能性があることをご理解下さい。
また、多くの遺伝子変異を調べるため、数パーセントの割合で遺伝性腫瘍の遺伝子変異(がんになりやすい遺伝子)が見つかることがあります。
これは本来の目的とは異なる、がん遺伝子パネル検査の副次的な結果ですが、その場合、血縁者の方も同じ変異を持つ可能性があります。
がん遺伝子パネル検査の適応
下記1~3の条件を満たす患者さん1人に対して1回のみ実施できます。
- 標準治療がない、治療が必要な固形がん患者(原発不明がん,稀少がんなど)。
- 局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了になりそうな固形がん患者。
- 全身状態及び臓器機能等から、本検査施行後にがんに対する薬物療法が行える可能性が高いと主治医が判断した患者。
長岡赤十字病院の診療体制
- 当院は、がんゲノム医療連携病院に指定されています。
がんゲノム医療拠点病院である新潟大学医歯学総合病院、がんゲノム医療中核拠点病院である 国立がん研究センター中央病院 / 東北大学病院 と連携してゲノム医療を実施しています。
がんゲノム医療中核拠点病院等一覧(厚生労働省ホームページ) - エキスパートパネル(がん遺伝子パネル検査の結果をもとに治療方針を検討する専門家会議)は新潟大学医歯学総合病院を中心に行われ、主治医、薬物療法専門医、遺伝医療専門医、病理医、専門看護師、臨床検査技師、薬剤師など各分野の専門家がゲノム診療に携わります。
- 患者さんやその御家族の不安や疑問についてサポートする体制を整えています。
- 副次的に判明した遺伝情報についての相談支援ができるよう臨床遺伝専門医を配置し、必要時にはカウンセリングが可能です。
がん遺伝子パネル検査の流れ・費用
当院で治療中の患者さんの場合
長岡赤十字病院以外で治療中の患者さんの場合
費用について
長岡赤十字病院では保険診療に基づく2種類のがん遺伝子パネル検査(OncoGuide™ NCCオンコパネル、 FoundationOne® CDxがんゲノムプロファイル)を行います。
検査費用として保険点数56,000点(3割負担の方の自己負担:168,000円)をお支払いいただくことになります。「高額療養費制度」が利用できますので、収入に応じて決められた自己負担を越える分は払い戻しを受けることができます。
- 検体を提出してもがん組織の状態によっては最終的なレポート作成ができない場合がありますが、その場合も同額となります。
- 検査費用はパネル検査同意書提出時(3割負担で132,000円)と結果説明時(3割負担で36,000円)の2回に分けてお支払いいただきます。
- その他、診察料などは別途必要になります。
- がん遺伝子パネル検査の保険適応を満たさない場合、保険診療下での検査提出は行えません。自由診療で実施する場合には56万円全額を自己負担でお支払いいただくことになります。
がん遺伝子パネル検査を希望される方へ
- がん遺伝子パネル検査の適応があるかどうか、現在の主治医の先生と相談してください。
- 臨床遺伝診療部を予約し受診していただきます。
- ご家族と一緒に来院してください。
- がん遺伝子パネル検査のために、血縁者の方の悪性腫瘍(がん)の有無について詳細をお聞かせいただきます。可能な範囲でご家族にお話しを聞いておいて下さい。
- 患者さんががん遺伝子パネル検査を希望されても、治療の経過やお身体の状態、病理検体の状況などからパネル検査の適応外と判断される場合があります。あらかじめご了承下さい。
- 検査からおよそ1ヶ月後の診察で患者さんへ結果を説明します。がん遺伝子パネル検査の結果に基づいた今後の治療方針については、主治医の先生とご相談下さい。
医療関係者の方へ ~準備・実施いただくこと~
当院では、保険診療に基づく2種類のがん遺伝子パネル検査を行います。
がん遺伝子パネル検査(包括的がんゲノムプロファイリング検査、以下 CGP検査)を当院に依頼される場合は、以下の手順でお願いします。
1.適応とCGP検査実施時期を、適切にご判断ください
原発不明がんや希少がんの場合、治療開始前のCGP検査提出が望ましいと思われます。
固形がんで標準治療の終了が見込まれる患者さんの場合、最終治療ライン移行前でのCGP検査実施をご検討ください。実際にCGP検査を受けた患者のうち、治験に参加できる患者の割合は5%未満と報告されていること、治療実施施設への通院などの患者負担についても配慮する必要があります。
参考までに、大腸癌研究会ガイドライン委員会のコメントを以下に転記しておきます。(2021年7月9日現在)
「切除不能進行大腸癌の患者に対しCGP検査を行う場合は、二次治療開始から後方ライン治療移行までの間に実施することが望ましい。ただし、腫瘍量や疾患進行の速度には個体差が大きいことを十分考慮し、患者の病態に応じたタイミングで本検査を実施することが適切である」
2.以下のリンク先(「がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査」ウェブサイト)のパンフレットをダウンロードして、患者さんとご家族に説明してください
PDFパンフレット『「がん遺伝子パネル検査」を検討する方にご理解いただきたいこと』は、<C-CAT資料室> → <資料> と進むと、ダウンロードできます。
患者さんが希望されても、治療経過や身体状況、病理検体の状態などから、パネル検査の適応外と診断される可能性があることを、あらかじめ患者さんとそのご家族に十分にご説明ください。
3.診療情報提供書(下記リンクからダウンロード)を作成し、病診連携室を通じて、当院臨床遺伝診療部宛にFAXをお願いします
当院臨床遺伝診療部では、「がんゲノム医療診療情報提供書」を参考に適応を判断します。問題ないようでしたら、以下の手順となります。
<組織検体提出予定の場合>
1.主治医の先生、もしくは病診連携の担当者様あてに、HEスライドとCT画像データ、 診療情報提供書原本をお送りいただくよう、依頼させていただきます。
2.検体の質と量、原病の進行状況を確認します。必要時は、主治医の先生にご相談させ ていただきます。
3.病診連携経由で、当院臨床遺伝診療部外来受診の予約をお取り致します。
<組織検体提出がない場合(FoundationOneⓇ Liquidがんゲノムプロファイル)>
1.主治医の先生、もしくは病診連携の担当者様あてに、CT画像データと診療情報提供 書原本をお送りいただくよう、依頼させていただきます。
2.CT画像データを確認後、病診連携経由で、当院臨床遺伝診療部の予約をお取り致し ます。必要時、主治医の先生にご相談させていただきます。
当院受診時には、可能な限り、ご家族と一緒に来院いただくよう、ご指導をお願いします。
4.臨床遺伝診療部外来受診
病歴や身体の状況、家族歴等をあらためて確認して適応を判断、検査説明とその同意取得を行います。
5.主治医の先生に、病理検体準備を依頼させていただきます
病理検体の取り扱い・作成については検査会社ホームページにある検体作成ガイドを遵守いただきますようお願いいたします。
◆FoundationOne® CDx(中外製薬(株)提供)
(サイト内の「検査・検体作製の概要」にお進みください)
→https://chugai-pharm.jp/pr/npr/f1/f1t/index/
◆OncoGuide™ NCCオンコパネル
(サイト内の「検体条件」にお進みください)
→https://products.sysmex.co.jp/products/genetic/AK401170/
6.検査結果に基づき、新潟大学医歯学総合病院(がんゲノム医療拠点病院)と連携してエキスパートパネルを実施、出検から4〜6週間後に、患者さんへ結果説明を行います
検査結果、推奨できる治療の有無とその内容、2次的所見の有無と対応内容について、迅速に情報提供いたします。
検査結果に基づいた今後の治療方針について、患者さんとご相談をお願いいたします。
よくあるご質問
がん遺伝子パネル検査を実施したいときはどのような手続きが必要ですか?
まずは自分の病気を担当する主治医に「がん遺伝子パネル検査」希望の意思をお伝え下さい。患者さんから直接の臨床遺伝子診療部への申し込みは受け付けていません。
家族だけの受診も可能ですか?
患者さん本人の受診が必要です。
「検体」とは何を使って検査するのですか?
手術や検査で採取したがん組織を使用します。がん遺伝子パネル検査の種類によっては血液も使用しますので、採血が必要になります。
有効な治療がみつかる可能性はどのくらいありますか?
治療につながる遺伝子変異がみつかる患者さんの割合は、10%程度です。
結果が出るまでどのくらいかかりますか?
検査の種類によりますが、検査提出から結果説明までおよそ4~6週間程度かかります。
問い合わせ先
長岡赤十字病院 がん相談支援センター
〒940-2085 新潟県長岡市千秋2丁目297-1
TEL:0258-28-3600(代表) FAX:0258-28-9000