概要
呼吸器外科は、胸部(首から横隔膜まで)に発症する疾患や外傷のうち、食道や心臓・血管系以外の病気を主に外科的に治療する診療科です。
主な対象疾患は肺がんで、そのほかにも転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍(胸腺腫など)、胸壁腫瘍、悪性胸膜中皮腫、気胸や巨大肺嚢胞などの嚢胞性肺疾患、膿胸、縦隔炎、胸部外傷など、幅広い疾患に対応しています。
当科では年間約200例の手術を行っており、その多くを胸腔鏡手術やロボット支援下手術といった低侵襲手術で実施しています。これにより患者さんの身体への負担が少なく、早期退院が可能となっています。
気胸などの比較的侵襲の少ない手術では、ほぼ全例を胸腔鏡手術で行っており、術後数日での退院が可能です。
また、呼吸器内科や放射線治療科などの専門医と連携し、診断から病期の決定、治療方針の検討までを多職種で行っています。
交通事故や転落事故などの胸部外傷では、救急部を中心に、整形外科、脳神経外科、消化器外科などと協力し、迅速に治療を行う体制を整えています。近年はドクターヘリによる搬送も増えており、重症外傷患者さんの救命例も増加しています。
ご挨拶
当科は、日本外科学会専門医・指導医、ならびに日本呼吸器外科学会専門医を取得した常勤医2名と、新潟大学からの出張医1名の計3名体制で診療を行っています。
当院は地域がん診療連携拠点病院として、中越地区におけるがん診療の中心的役割を担っています。
当科では、5大がんの中で最も死亡数の多い肺がんに対する外科治療を中心に、呼吸器内科、放射線治療科、病理診断部と連携し、肺がんによる死亡を少しでも減らすことを目標に日々診療に取り組んでいます。
また、気胸や膿胸、胸部外傷など、緊急性の高い疾患にも24時間対応できる体制を整えています。
特色・方針
当科の手術実績では、原発性肺がんに対する手術が最も多く、その約90%を胸腔鏡手術(VATS)などの低侵襲手術で行っています。
さらに2025年からは、より精緻な手術操作を可能にする手術支援ロボット(ダビンチ手術システム)を導入し、ロボット支援下手術(RATS)を開始しました。本手術は上・中越地域では当院のみで実施しています。
胸腔鏡手術やロボット支援下手術は、皮膚切開が小さく、肋骨を切らないため、術後の痛みが少なく、回復が早いことが特徴です。肺がん手術では、入院から退院までおおむね1週間程度です。
2cm以下の末梢小型肺がんに対しては、肺葉切除より切除範囲の少ない区域切除が有効であることが示されており、当院でも積極的に取り入れ、年々症例数が増加しています。
進行肺がんに対しても、手術に加えて化学療法、免疫療法、放射線治療を組み合わせた集学的治療を行い、良好な治療成績を得ています。
また、縦隔腫瘍(胸腺腫)や重症筋無力症に対する拡大胸腺摘出術についても、ほとんどの症例で鏡視下手術を行っています。
当院は中越地域の基幹病院として、重い合併症をお持ちの患者さんにも対応できる体制を整えており、迅速な多診療科連携により、すべての患者さんが元気に退院されることを目標としています。

対象疾患
当科では以下の疾患を対象に診療を行っています。
- 肺がん、転移性肺腫瘍などの呼吸器悪性腫瘍
- 胸腺腫・胸腺がん・胚細胞性腫瘍などの縦隔腫瘍
- 気胸(若年者・高齢者・女性〈月経随伴性〉)、巨大肺嚢胞などの嚢胞性肺疾患
- 非結核性抗酸菌症、肺真菌症、肺膿瘍などの肺感染症
- 悪性胸膜中皮腫、胸壁腫瘍
- 膿胸(急性・慢性)、縦隔炎
- 胸部外傷(血胸、肋骨・胸骨骨折など)
診療内容
肺がん:
肺がんは我が国で死亡数の多いがんの一つで、早期発見と適切な治療が非常に重要です。検診で胸部X線異常を指摘された場合や、咳・血痰などの症状がある場合には、精密検査を行います。
検査としては胸部X線検査やCT検査を行い、現在は1mmスライスの高精細CTにより、小さな病変の発見や正確な病期(ステージ)診断が可能です。また当院では術前PET-CT検査による精度の高いステージングを重視し、過不足のない外科治療および集学的治療の選択につなげています。
肺がんが疑われる場合には、気管支鏡検査などで組織を採取し、病理検査によって診断を確定します。
I~II期の肺がんに対しては、胸腔鏡手術(VATS)やロボット支援下手術(RATS)による肺葉切除や区域切除を行っています。術後に化学療法や分子標的薬・免疫療法を追加することもあります。
II~III期では、手術の前後に化学療法・分子標的薬・免疫療法・放射線治療を組み合わせた集学的治療を行っています。
近年の薬物療法の進歩により、当初は手術が困難と判断された進行肺がんでも、治療後に手術を追加する救済(サルベージ)手術を行う機会が増えています。
多くの患者さんで、入院期間は約1週間程度です。

縦隔腫瘍・重症筋無力症:
胸腺腫や胸腺がんなどの縦隔腫瘍では、周囲臓器への浸潤が明らかでない場合、胸腔鏡下手術で切除を行っています。
血管への浸潤がある症例では、心臓血管外科と連携し、血管再建を含む拡大手術にも対応しています。
嚢胞性肺疾患(気胸など):
若年者気胸をはじめとする嚢胞性肺疾患では、ほぼ全例で胸腔鏡下手術を行っており、術後3日程度で退院可能です。
一方で、手術を行わずに経過観察が可能な場合もあり、患者さんの状態に応じた治療を行います。
膿胸:
多くの場合、胸腔ドレーンによる治療で改善しますが、効果が不十分な場合には、胸腔内を洗浄・浄化する手術を行います。
術後の入院期間は1~2週間程度です。
胸部外傷:
胸腔内出血や重度の肋骨・胸骨骨折では、止血や骨整復のために手術が必要となることがあります。
一方、保存的治療が可能なケースも多く、状態に応じて最適な治療法を選択します。
ロボット支援下肺腫瘍手術
手術支援ロボット「ダビンチXi手術システム」は、高精細3D画像と多関節鉗子により、より正確で繊細な手術操作を可能にします。特にリンパ節郭清や縦隔などの重要構造が集まる部位で有用です。
ロボット支援下手術は2018年より保険診療として認められており、肺がんに対する肺葉切除・区域切除などが対象です。2023年には全国の肺がん手術(部分切除を除く)の約18%がロボット支援下で行われています。
当院では、新潟県内の呼吸器外科領域において大学病院に次いで2施設目として導入しました。
ロボット支援下手術についてのご質問は、外来でお気軽にお尋ねください。

診療実績
過去5年間の手術実績
| 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 全手術数 (うち胸腔鏡手術) |
169 (155) |
212 (187) |
206 (162) |
178 (146) |
196 (179) |
|
| 1) 原発性肺癌 (うち胸腔鏡手術) |
93 (83) |
121 (113) |
107 (81) |
103 (85) |
105 (86) |
|
| 2) 気胸 | 32 | 25 | 33 | 17 | 28 | |
| 3) 縦隔腫瘍 | 4 | 7 | 12 | 7 | 8 | |
| 4) 転移性肺癌 | 19 | 15 | 16 | 9 | 19 | |
| 5) 他 | 21 | 44 | 38 | 42 | 46 | |
(対象期間:1月1日~12月31日)
医師紹介
| 氏名 | 職位 | 専門領域 | 認定資格等 |
|---|---|---|---|
| 篠原 博彦 (平成8年卒) |
部長 | 呼吸器外科 | 日本呼吸器外科学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本外科学会専門医・指導医 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医 日本肺癌学会暫定指導医 JPTECプロバイダー 小児ITLSプロバイダー 日本DMAT隊員 ドクターヘリフライトドクター |
| 佐藤 征二郎 (平成14年卒) |
部長 | 呼吸器外科 | 日本呼吸器外科学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本外科学会専門医・指導医 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医・指導医 日本呼吸器学会専門医・指導医 日本肺癌学会暫定指導医 日本呼吸器外科学会胸腔鏡安全技術認定医 肺がんCT検診認定医機構認定医 |
| 田中 博 (令和1年卒) |
日本外科学会専門医 |
お知らせ
- 呼吸器外科外来は、毎週火曜日と木曜日です。初めて当科を受診される方は、電話での予約をお願いします。その際、できるだけ「かかりつけ医」等の紹介状の持参をお願いします。
- 検診、人間ドック、たまたま撮ったレントゲン写真などで「肺に影がある」と言われた場合は、まず呼吸器内科の受診をお願いします。
- 気胸が疑われる場合は、早めに(当日中に)、当科外来または救急外来を受診して下さい。
2010年に当院で肺癌の手術を受けられた方へ
臨床データの研究利用に関するお願い
長岡赤十字病院呼吸器外科では、全国肺癌登録委員会の研究に参加し、他施設との共同研究として、肺癌手術症例の統計および調査を行っております。
研究名および研究代表者
2017年に外科治療を施行された肺癌症例のでータベース研究(肺癌登録合同委員会第10次事業)
研究代表者:新谷 康
肺癌合同登録委員会 委員長
大阪大学大学院 医学研究院 外科系臨床医学専攻 外科学講座呼吸器外科学
研究の概要・意義・目的
肺癌登録合同委員会は、肺がんに関する研究ならびに診療の進歩・普及を図ることを目的として、これまでに本邦の肺がん手術患者さんの情報を全国集計し(肺癌登録事業)、その結果を論文等で報告してきました。今回、2017年に本邦で肺がん手術を受けられた患者さんの情報を集計し、肺がん外科治療の現状と治療成績を調査します。本邦における肺がん研究ならびに診療の実態を把握し、肺がん外科診療の普及および進歩を促すことを目指しています。
研究に用いる試料・情報の種類
当院で2017年に肺がんの手術をされた患者さんに関して、診療録に記載されている情報を集め解析します。具体的には、治療を受けた施設名、患者さんの基本情報(生年月日、性別、入院日、手術日、身長、体重、併存疾患、喫煙状態など)、検査に関する情報(画像検査所見、血液検査結果、呼吸機能検査結果など)、手術情報(手術術式、手術時間、出血量、最大創長、創の数、リンパ節郭清範囲など)、病理診断情報(組織型、腫瘍径、病期分類、遺伝子変異検査結果など)、周術期情報(退院日、術後合併症、術後補助療法など)、予後情報(再発有無の状態やお亡くなりになった方の死因など)といった各種の情報を集めます。
個人情報等の取り扱い
本研究で得られた個人情報は、氏名等の個人を特定するような情報を削除し、どなたのものか分からないように加工して、厳重に管理します。データ等は、セキュリティーの高いインターネット通信で肺癌合同登録委員会のデータベースに登録します。
ご希望があれば、他の患者さんの個人情報や研究に関する知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書および関連資料を閲覧することが出来ますのでお申し出ください。
また、試料・情報が当該研究に用いられることについて、患者さんもしくは患者さんの代理人の方が拒否された場合には研究対象といたしません。その場合でも患者さんに不利益が生じることはありません。
本研究に関するご質問等がある場合や、研究への試料・情報の利用を拒否する場合には、下記の連絡先までお問い合わせください。
ただし、既にこの研究の結果が論文などで公表されていた場合には提供していただいた情報や、試料に基づくデータを結果から取り除くことができない場合があります。なお、公表される結果には特定の個人を識別することができる情報は含まれません。
お問い合わせ先
日本赤十字社 長岡赤十字病院 呼吸器外科
担当医師:篠原 博彦、佐藤 征二郎
〒940-2085 新潟県長岡市千秋2丁目297-1
電話:0258-28-3600(代) FAX:0258-28-9000(代)



